シリコンウエハー
シリコン(ケイ素)は4価の不安定な非金属元素で、結晶はもろく灰色をしています。また地核成分の27.8%を構成し、自然界では酸素の次に多く存在する元素でもあります。ケイ素は石英・瑪瑙(めのう)(石英・玉髄・たんぱく石の混合物)・燧石(すいせき)(火打ち石)・海辺の砂中等に存在し、セメント・レンガ・ガラス等建築材料の主原料、また大部分の半導体やマイクロチップの基板原料でもあります。ケイ素そのものの伝導率は低いですが、精密なドーピングより抵抗率を規格値に調整することで、伝導率を上げることができます。
半導体形成に際してはウェハー状のシリコンが必要となり、この過程はシリコンインゴットの育成から始まります。シリコン単結晶は3次元状規則的に配列されたケイ素原子より構成されます。一方、シリコン多結晶は不規則に結合された多数のシリコン単結晶からなるために、これをそのまま半導体材料として使用することはできません。多結晶シリコンを半導体製品用のウェハーに加工するためには、単結晶シリコンに融解することが必要となります。
シリコンウェハーの製造
シリコンインゴットの育成には1週間から1ヶ月を要し、寸法・品質他の規格等によりこの期間が変わってきます。75%以上の単結晶シリコンウェハーはチョクラルスキー法(Czochralski=CZ法)と呼ばれる製造方法で育成されます。CZ 法では未使用の多結晶シリコンの塊からインゴットを形成します。この塊は石英ルツボの中に、少量のドーパントと呼ばれる特定のⅢ属・Ⅴ属元素と共に入れられ、これらの働きで育成後のインゴットは規定の電気特性を持つことになります。ドーパントとして一般的にはホウ素・リン・ヒ素・アンチモンが用いられ、使用するドーパントによりインゴットはP型もしくはN型インゴットとなります。(ホウ素:P型、リン・ヒ素・アンチモン:N型).
これらの原料をシリコンの融解点である摂氏1420度まで加熱し、多結晶シリコン間・ドーパント間の結合が切れると、単結晶シリコン(種結晶と呼ばれる)を融液の表面まで垂らします。この種結晶は最終的に育成されるインゴットの規格と同一の組成をしています。ドーピングを均一にするために、種結晶の回転とルツボ内のシリコン融液の回転は逆方向とします。結晶化に必要な状態に達すると、徐々に種結晶を融液から引き上げます。インゴット育成初期段階での結晶化の不良を抑えるため種結晶は初め高速で引き上げられますが、その後減速され、インゴットの直径は増加していきます。直径が規定値に達すると、育成がそれ以上進まないよう状態が保たれます。種結晶が低速で融液から引き上げられるにしたがって、種結晶・融液間の表面張力がシリコン薄膜を形成するため、種結晶へ付着し冷却・固化します。融液中にあったシリコン原子は冷却中、種結晶と同じ組成に再結合されます。
インゴットが十分に育成されると、規定のウェハーよりも若干大きな半径にまで研磨されます。その後インゴットに結晶方位を示す溝(ノッチ)または平面(フラット)を付与します。検査が重ねられ、インゴットはウェハーにスライスされます。シリコンが硬質であるためにダイアモンドブレードを使用し、インゴットは規格よりも厚いウェハーにスライスされます。ダイアモンドブレードを使用することで、ウェハーの損傷・厚さの不均一・歪曲等の欠陥を軽減することができます。
ウェハーのスライスが完了するとラップ加工が始まります。ウェハー両面を研磨し刃跡やスライス面の傷を除去します。また、この工程はウェハーを薄くし、スライス加工でウェハーに蓄積された圧力分布の偏りを除去します。ラップ加工が終了するとエッチング・洗浄工程に入ります。酢酸または水酸化ナトリウムと硝酸を混合したエッチング液で、ラップ加工での破壊層を除去します。徹底した研削により外周面取りを行い、以後の工程やウェハー使用製品の製造工程での破損・欠陥を大幅に抑えます。外周面取りが完了すると、規格にしたがい外周を研磨し、全体の清浄度と欠陥率低減を4倍にまで高めます。
製造工程の最終段階でかつ最も重要となるのがウェハーの研磨で、特に清浄度の高い部屋で行われます。クリーンルームは1立方フィート(28.3リットル)当たりの塵埃の数によりクラス1からクラス100,000に分類されます。参考までに、これらの塵埃は肉眼では不可視で、リビングやオフィス等の生活空間では塵埃の数は1立方フィート当たり500万程度であるといわれます。クリーンルームの清浄度を維持するため、従業員は塵埃を付着させたり運んだりしないよう設計されたクリーンルーム・スーツを着用し、頭から爪先までを覆います。クリーンルーム入室直前には、エアシャワーによりあらゆる塵埃を除去します。
最良質のウェハーは、より精製されたスラリー(液状研磨剤)や研磨混合物を使用して2、3段階かけて研磨されます。両面研磨が行われる300mmウェハーを除いて、工程時間の大部分はウェハーの表面片面のみの研磨に費やされます。研摩工程を経て、ウェハーの片面(両面研磨の場合は両面)は鏡面加工され、デバイス製造に使用されます。鏡面からはトポグラフィー・ミクロレベルのひび・研磨傷・残りの作業からの欠陥を除去しなければなりません。研磨工程は2段階に分かれて行われます。まずストックリムーバル(1次研磨)、そして2次研磨です。どちらの工程でも研磨布とスラリーを使用します。ストックリムーバル工程は損傷のないウェハー表面を形成するために必要で、非常に薄いシリコン層を除去します。2次研磨工程は何も物質は除去せず、ストックリムーバル工程で生じた曇りを磨き取ります。
研磨後、ウェハーは一連の洗浄槽を経て洗浄されます。この工程で表面の塵埃・金属跡・残余物を除去します。工程後、更に微細な塵埃を除去するため、通常裏面もこすり洗いされます。
ウェハーの洗浄槽での洗浄が完了すると規格別に分類し、高輝度スポットライトやレーザスキャナシステムで塵埃やその他欠陥の有無を検査します。厳密な検査をクリアすると、ウェハーを出荷用容器に納め、テープで封をします。その後真空包装袋に納め、クリーンルームから持ち出す際に塵埃や水蒸気が容器内に浸入しないようさらに金属箔袋に密封します。
製品アプリケーション
半導体やICはシリコンから製造され、シリコンウェハー上には人間の毛髪の1/100未満のサイズのトランジスタが百万個単位で搭載されています。これら半導体は電流制御により単語・数字・音声データを処理します。世界中の全主要集積回路メーカで、間接的には全人類に使用されていることになります。コンピュータ・テレコミュニケーション端末・TV等の普及製品や、マイクロ波伝搬装置、レーザシステム、医療診断・治療器具、防衛システム、NASAのスペースシャトル等のより複雑なシステムにも組み込まれています。
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